桶狭間はマグレだったのか?
大間違いの織田信長⑦ 信長は成功体験を捨てられた!
強い相手がいたら戦わない
信長は弱い。信玄や謙信よりも圧倒的に弱い。では、なぜ信長は弱くて、信玄や謙信の軍は強いのか。
古今東西、傭兵とは忠誠心がゼロで、金だけもらって逃げるので、弱いのが普通です。
しかし、先ほども言った通り信長は自分よりケンカが強い相手がいたら、ひたすら土下座して戦わないようにノラリクラリとします。自分のほうが若いから、相手が死ぬのを待てばよいや、と我慢の戦略がとれる人なのです。謙信にも信玄にも、国境を越えて攻めてこないでね、と土下座してお願いするのですが、逆に、相手が弱いとなったら攻めかかります。ただ、その判断をよく間違えてしまうのも、また信長の実態なのですが、最終的な大枠は間違えないので、三十回負けても 百三十回勝てるのです。
だから弱い。多くの評論家の先生方が軒並み事実誤認しているのが、「信長は金で雇った兵隊だから一年中いつでも軍隊を動員できたけど、武田軍や上杉軍は戦闘には強い反面、構成員が農民で冬は戦えなかった」という理論です。一次史料を調べれば一発で分かりますが、上杉謙信は冬でも戦っていますから、この時点でウソです。むしろ半分農民の軍隊のほうが強いに決まっています。
というのは、少し細かいことを言うと、確かに農家の長男は農民なのですが、次男、三男と続き四男、五男になると田畑を耕すのに不要ですから、その余った農村余剰人口を軍隊に入れているのが当時の社会です。傭兵と違って、農民出身の兵隊は逃げたら帰るところがありません。だから必死に戦うので、強い軍隊になります。ナポレオンの国民軍が周辺諸国の傭兵を片っ端からやっつけたのも、同じ理屈です。
武田や上杉、あるいは信長周辺の戦国大名は共同体軍ですが、その共同体軍に勝てないので、補う不屈の努力をやっているのが、織田軍です。その様子は後から見ていきましょう。
〈『大間違いの織田信長』(著・倉山満)より構成〉。
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